【連載】2021年航空法改正後のドローン・ビジネス法務-第3回:イベント撮影に及ぼす影響

■はじめに

『連載:2021年航空法改正によるドローン・ビジネス法務』の第1回,第2回では,航空法の改正により,飛行リスクに応じたカテゴリーが3つに分類されることや各カテゴリーで要求される飛行条件として,「操縦ライセンス」等について解説してきました。

第3回となる今回からは,航空法改正が個別のドローン・ビジネスに及ぼす影響について解説していきます。

本記事では,ドローンが急速に普及するきっかけともなった空撮,特に,イベント撮影について解説します。

■ドローンによるイベント撮影の規制

現行法の規制

皆さまは,屋外でのライブフェスやスポーツの試合といった大勢の観客があつまるイベントにおいて,空飛ぶドローンを見たことがあるのではないでしょうか?
直接みたことがないという方も,ドローンで撮影されたと思われる迫力ある映像に,たくさんの人たちが映っているのをご覧になられたことがあるかと思います。

このように,多くの人が集まる場所でドローンを飛行させることについては,現行の航空法でも規制されています。

(飛行の方法)
第百三十二条の二
無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる方法によりこれを飛行させなければならない。
・・・
八 祭礼、縁日、展示会その他の多数の者の集合する催しが行われている場所の上空以外の空域において飛行させること。

つまり,多くの人が集まっている場所の上空を飛行させるという飛行方法をとることは,原則として,禁止されています。

しかし,原則には例外がつきものです。
航空法132条の2歳2項です。

前項の規定にかかわらず、無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる場合には、同項第五号から第十号までに掲げる方法のいずれかによらずに飛行させることができる。

一 前項第五号から第十号までに掲げる方法のいずれかによらずに無人航空機を飛行させることが航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全を損なうおそれがないものとして国土交通省令で定める場合
二 前号に掲げるもののほか、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、前項第五号から第十号までに掲げる方法のいずれかによらずに無人航空機を飛行させることが航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全を損なうおそれがないことについて国土交通大臣の承認を受けて、その承認を受けたところに従い、これを飛行させる場合

つまり,国土交通大臣の承認を個別に受けることで,飛行させることが許されているということになります。

2021年航空法改正による影響

それでは,航空法の改正により,この規制は緩和されるのでしょうか?
答えは  です。

第2回の記事で,カテゴリーⅡ(「特定飛行」かつ「第三者立入措置が施されている」場合)には,操縦ライセンスの保有など一定の条件を充たすことで個別の許可・承諾を不要とする改正について解説しました。

もっとも,個別の許可を不要とする「飛行方法」は,以下のものに限定されます。
① 夜間飛行
② 操縦者の目視外での飛行
③ 人や物から30m未満の飛行

イベント上空を飛行させる場合には,ドローンの落下等による被害が発生する危険性が高いため,個別の審査を不要とする類型からは除外されています。

■まとめ

以上のとおり,

イベント会場の上空をドローン飛行させる形態のビジネスは,2021年航空法改正による影響を受けず,従前どおり個別の許可・承諾が必要である

ということになります。

操縦ライセンスを保有している場合でも,許可なくイベント上空を飛行させることは法律違反となりますので,十分にご注意ください。

 

 

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