商品・サービスの販売事業者が注意すべき広告規制~「優良誤認表示の禁止」

■はじめに

消費者は、SNSなどのインターネットやテレビ、チラシといった広告を見て、商品やサービスを購入するかどうか判断します。
このため、広告の内容に嘘偽りがあれば、消費者が本当に欲しかった商品やサービスの価値を享受できないという結果となってしまいます。

そこで、消費者が宣伝広告と同じ、本当に欲しいと思った商品やサービスを得られるよう、販売事業者には、”景品表示法”により消費者に商品やサービスの内容に勘違いを抱かせないための規制がいくつか置かれています。

この記事では、ECサイト等で商品やサービスの宣伝広告を出して販売している事業者などが知っておいた方がよいであろう広告規制について簡単に説明しています。

■景品表示法-「優良誤認表示の禁止」

まず、景品表示法第5条第1号を見てみましょう。

不当景品類及び不当表示防止法
(不当な表示)
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事  業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

「事業者」や「自己の供給する商品又は役務の取引」という文言は、特に難しく考える必要はありません。
商品やサービスを消費者へ提供されている業者さんは、全てあてはまるものと考えておいてください。

「一」以下の文章を、分けて読むと、
①商品やサービスの品質や規格その他の内容について、実際のものよりも著しく優良であると示す表示をしてはならない
②事実とは異なって競争関係にある事業者が提供する商品やサービスよりも著しく優良であると示す表示をしてはならない
ということになります。

これらの表示を「優良誤認表示」といい、景品表示法で禁止されています。

■「優良」であるか否かの判断基準・ものさし

では、どのような表示が、実際のものや競業他社のものよりも「優良」であると示していることになるのでしょうか。

この点は、公正取引委員会による「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針」で、以下のとおり示されています。

「著しく優良であると示す」表示に当たるか否かは、業界の慣行や表示を行う事業者の認識により判断するのではなく、表示の受け手である一般消費者に、「著しく優良」と認識されるか否かという観点から判断される。

つまり、あくまでも、一般消費者が、問題とされている広告を見たときに、「優良」であると判断するか否かが判断基準とされているのです。
これは、景品表示法が、一般消費者を不当表示による広告から守る目的があることからも当然かもしれません。

とはいえ、一般消費者が「著しく優良と認識するかどうかの判断」そのものが最も難しいところではないでしょうか。

 

例えば、製紙メーカーがコピー用紙の宣伝広告に、古紙パルプの配合率を実際よりも高く表示したケースを考えてみてください。
ちなみに、コピー用紙の強度や白色度といった紙そのものの性能は、科学的・客観的にみれば、古紙パルプの配合率が”低い方が優れている”とされているようです。
このため、古紙パルプの配合率を実際よりも高く表示することは、かえって、コピー用紙の性能を「劣悪」であると示す表示ともいえそうです。
そこで、上の宣伝広告の表示が、「実際のものよりも著しく優良であると示す」表示には該当しないのではないかが争われたのです。

結論は、古紙パルプの配合率を実際よりも高く示すことは、「優良」表示であると判断されています。

このように、科学的・客観的には商品の性能を優良に示すものとは言い難い場合でも、一般消費者がどのように認識をするのか?という視点から検討すると、優良表示に該当するケースも散見されるのです。

「問題となる広告を一般消費者ならばどのように認識するか?」という点は、安易に考えるべきではなく、過去の類似した事案でどのように判断されているかを調査するなどして、より慎重な判断が必要といえます。

■結論

  • 景表法は「優良誤認表示」を禁止すしている
  • 広告の表示が「著しく優良であると示す」表示か否かの判断は、一般消費者からどのように認識されるかという観点で行われる
  • 一般消費者が問題とされる広告表示をどのように認識するかについては、過去の類似事案等を分析して慎重に判断するべきである

 


執筆者: 弁護士 内藤皓太

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