【連載】2021年航空法改正後のドローン・ビジネス法務

■ 連載にあたり

ドローンは,航空法上の「無人航空機」に該当し,同法に規定された飛行空域や飛行方法に従って飛行しなければなりません。
このことは,ドローン・ビジネスに関わる方々にとっては,最早,常識といえるレベルにまで浸透していることかと思われます。

『連載:2021年航空法改正によるドローン・ビジネス法務』では,2021年航空法改正により初めて導入されることとなる「ライセンス制度」「登録講習機関」など,ドローン・ビジネスに及ぼす影響に焦点を当てて解説します

■ 2021年改正航空法(2022年12月頃施行予定)の概要

2021年の航空法改正の概要は,以下の2点です。

① 飛行により他人に危害を及ぼすリスクの程度に応じて「カテゴリー」を3つに区分し,機体安全性確保・操縦者の技能確保・安全体制の確保の3つの視点から各カテゴリーに規制を設けた
② これまで個別の飛行について国土交通大臣の許可・承認を要していたところを,「機体認証制度」と「操縦ライセンス制度」等を設けて個別の手続を一部省略できるようにした

特に,飛行リスクに応じたカテゴリーごとに,飛行の際に求められる機体認証や操縦ライセンスの種別および運航ルールが異なります。

これまでドローン操縦者として業務委託を受けるなどして仕事をされてきた方々にとっては,ドローンを飛行させる際に適用されるルールを正確に理解する上で,また,ドローン・スクールを運営してきた事業者などにとっては,受講者が操縦ライセンスを取得する目的に応じて適切な受講カリキュラムを提供する上で,上記の「カテゴリー」を正しく理解しておくことが必須です。

そこで,この記事では,飛行リスクに応じたカテゴリー区分及びその規制内容について解説しています。

■ 飛行リスクに応じたカテゴリー区分

● カテゴリー区分の概要と規制

改正航空法では,ドローン飛行により他人に危害を及ぼすリスクに応じて,カテゴリー区分されています。

各カテゴリーは,①「特定飛行」にが該当するか否か②第三者の立入管理措置が講じられているか否か(第三者の上空を飛行するか否か)という観点から,リスクの高いものから順に,Ⅲ・Ⅱ・Ⅰと3つのカテゴリーに区分されます。

”特定飛行”に当たるか否か 立入管理措置がなされているか否か
カテゴリーⅢ
特定飛行である

立入管理措置なし
(第三者の上空を飛行)

カテゴリーⅡ
特定飛行である
立入管理措置あり
カテゴリーⅠ ×
特定飛行でない

カテゴリーⅢとⅡは,いずれも「特定飛行」に該当しますが,立入管理措置(第三者が飛行経路周辺に立入らないように講じられる措置)が講じられているか否かの点で異なります。
立入管理措置が講じられないカテゴリーⅢでは,第三者の上空を飛行することが想定されるため,第三者の身体や所有物に危害を及ぼすリスクが最も高い類型となります。

● 「特定飛行」の意味

カテゴリーⅢとⅡは,いずれも「特定飛行」の場合です。

「特定飛行」とは以下のような飛行を指し,特定の「空域」や「飛行方法」によるドローン飛行のことで,以下に図示した領域あるいは方法による飛行を指します。

【空域】
【飛行方法】

■ カテゴリー区分と規制

ドローンを飛行させる際に要求される「機体認証」や「ライセンス」の種別、「運航ルール」は以下のとおりとなります。

改正航空法におけるカテゴリーⅢは,現行法ではドローン飛行が認められていない区分となります。
もっとも,ドローンをより利活用するべく,機体認証及び操縦ライセンスに加え,安全を確保するための運航ルールを設定するなど,一定の条件のもとで飛行を許可・承認されることとなります。

※カテゴリーⅢの運航ルールについて,経済産業省と国土交通省が合同で開催する「無人航空機の目視外及び第三者上空等での飛行に関する検討会」より2021年6月11日に公布された「令和3年度とりまとめ」では,ドローンの運航形態に応じたリスク評価を行い,リスク軽減策を盛り込んだ飛行マニュアルを作成・遵守することとする基本方針が定められました。
併せて,リスク評価の手法については「リスク評価ガイドライン」が策定される方針とされていましたが,現時点(令和4年8月15日時点)においてもリスク評価ガイドラインが公表されていません
改正法が施行される12月頃までにはガイドラインが公表されると思われることから,今後の動向を注視し,本連載でも取り上げる予定です。

また,改正航空法におけるカテゴリーⅡは,現行法では飛行毎の個別の許可・承認を必要としていましたが,一定の条件をクリアした場合には許可・承認の手続を省略できることとされています。
カテゴリーⅡの規制内容については,連載第2回で取り上げる予定です。

■ 本記事のまとめ

連載初回となる本記事では,飛行の際に求められる機体認証や操縦ライセンスの種別および運航ルールを整理する前提として,飛行リスクに応じたカテゴリーについて解説しました。
特定飛行に当たるか否か,立入管理措置が講じられているか否か(=第三者の上空を飛行することが想定されているか否か)の視点から,その飛行リスクが高い順にⅢ・Ⅱ・Ⅰと分類されています。
そして,各カテゴリーに応じて,許可・承認の手続や求められる操縦ライセンスに差が設けられているということについて簡単に触れました。

第2回以降では,本記事の最後に言及した各カテゴリーで要求される『機体認証』や『操縦者ライセンス』,『運航ルール』について詳しく解説する予定です。


執筆者: 弁護士 内藤皓太

 

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