経営者保証ガイドラインを活用した個人保証債務の整理

・代表者個人の連帯保証の問題点

本投稿では、昨今問題となっている事業倒産時の代表者保証債務の整理について、解説します。
一般的に事業を行う上で、金融機関等から事業資金の融資を受け、ビジネスを行っていくと思います。
その際、代表者個人が融資に関して、個人で連帯保証を求められることが多く、事業の倒産時に、代表者が連帯保証人になっていた際に、牽連して個人破産に至る例が多くみられます。

個人破産をした場合、信用情報機関にその旨が登録され、約10年間は信用情報機関に登録された状態が継続し、新たな事業のリスタートや再スタートができなくなってしまい、いわゆる失敗できない事業経営になってしまうことによって、大体な経営戦略が取れず、日本の経済活動にも悪影響があると考えられます。

そこで、平成26年2月1日から日本商工会議所と全国銀行協会が設置した経営者保証ガイドライン研究会が経営者保証に関するガイドラインを策定し、施行されました。

・経営者保証ガイドラインとは

経営者保証ガイドラインは、主に①保証契約時の対応として、一定の要件を満たす場合に、代表者個人の連帯保証がなくても融資を受けられるようにすること等を求め、②保証債務の整理時の対応としては、一定の要件を満たす場合に、法人が破綻した場合でも、一定期間の生計費に相当する額や華美でない自宅などを個人破産させることなく、代表者個人に残存させること等を求めています。

経営者保証ガイドラインは、主たる目的として事業再生時の金融機関との私的整理がその目的の一つとしてあげられており、また、ガイドラインの構成も私見ではありますが、事業再生を念頭にした策定の仕方となっています。

しかし、昨今の日本における会社破綻の場合、事業再生が難しく、法人は整理(破産手続き)を余儀なくされる場合が多いかと思います。

今回は、中小企業の倒産時に多く例がある、法人が破産手続きを取った場合の個人の保証債務について、個人破産しない経営者保証ガイドラインを活用した私的整理について記載させていただきます

・再チャレンジ支援(単独型)

現時点で、経営者保証ガイドラインを活用して、個人の保証債務について私的整理を行う場合、中小企業活性化協議会の再チャレンジ支援を受けることがベストな手法と思われます。(参考hp https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/03.html)

中小企業活性化協議会において、事業再建が困難な事案であっても、相談企業や保証人は「円滑な廃業」や「経営者・保証人の再スタート」に向けて、各種のアドバイスを受け、代理人弁護士の紹介を受けることが可能です。この際に、企業破綻によって、個人の保証債務について債務整理が必要となった場合においても、経営者・保証人は、経営者保証ガイドライン(単独型)に基づく保証債務の整理について、中小企業活性化協議会の支援を受けることができ、要件はありますが、個人破産手続きを経ずに保証債務を整理することが可能です。

そして、経営者保証ガイドラインによって、個人保証債務を整理できた場合、信用情報機関に登録されることもなく、その後新規事業の再スタートに踏み出すことが可能となります。

一定の要件がありますが、法人破産(破綻)をする場合においても、代表者個人の債務について破産手続きを取らずに、整理することが可能となっています。

しかし、現在は、経営者保証ガイドラインを活用した私的整理について、弁護士業界の周知度も低く、その取扱いも周知されていないのが現状です。

 

・ポイント

① 経営者保証ガイドラインを活用することによって、個人保証債務について、個人破産をせずに、債務整理ができる場合がある。
② 現在は、経営者保証ガイドラインを活用する場合は、中小企業活性化協議会の支援を受けることが最もベストな手法となる。

・おわりに

 弊所では、中小企業活性化協議会との連携により、法人破綻の場合にも個人保証債務について、個人破産をせずに、整理する経営者保証ガイドラインを活用した私的整理にも力を入れています。
事業を行っていくうえで、ビジネス上のリスクはすべてのビジネスに潜在しており、破綻を恐れて、大胆な経営戦略が取れないのは、経済にとってマイナスと思います。

 仕方なく、法人破綻に至る場合でもできるだけ速やかな再スタートに踏み出せるよう支援させていただきますので、お気軽にご相談ください。

執筆者:弁護士 簗田 真也

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